「広告文、いつの間にか変わってませんか」と聞かれて考えたこと

2026年9月から、一部のGoogle広告アカウントが自動でAI活用の設定へ切り替わり始めた。注文住宅会社の担当者からの一言をきっかけに、「任せる」と「委ねる」の違いについて考えた話。
先週、長年お付き合いのある注文住宅・リフォーム会社の担当者から、こんな連絡をもらった。
「広告文、いつの間にか変わってません? 最近の問い合わせ、ちょっと今までと温度感が違う気がして」
え、と思った。
こちらから広告文を差し替えた記憶はない。ただ、話を聞きながら、心当たりがひとつだけ頭に浮かんだ。
9月から、静かに切り替わっていた
ちょうどその少し前、業界の情報として「Google広告の一部アカウントが、9月から自動的にAI活用の設定へ切り替わり始めている」という話を耳にしていたところだった。対象になるのは、広告文の一部をGoogle側に自動生成させる機能や、キーワードの部分一致に関する設定をオンにしているアカウントだと、複数の情報筋から報告されている。
切り替わると、登録していたキーワード以外の検索語句にも広告が表示されやすくなったり、広告文がユーザーごとに自動で調整されたり、遷移先のページが設定と少し異なるものになったりする可能性がある、という。
自動化そのものは、悪い話ではない
正直なところ、自動化そのものは悪いことではないと思っている。運用の手間が減り、これまで拾えなかった検索語句からの反応が増える、という報告も一般的にはあるようだ。
実際、その注文住宅会社でも、ここ数週間の問い合わせ件数だけを見れば、むしろ増えている月だった。数字だけを見れば、順調そのものだったと思う。
ただ、その担当者が感じていた違和感は、機能の良し悪しとは別のところにあった。
怖いのは「誰が変えたのか分からない」こと
「広告文が変わったこと自体より、“誰が”、“どういう意図で”変えたのかが分からないのが、ちょっと怖いんです」
その一言に、僕は思わずうなずいてしまった。
さっそく該当のアカウント設定を確認してみると、たしかに自動生成の関連機能がオンになっていた。いつからそうなっていたのか、正確なところは正直はっきりしない。数ヶ月前の運用改善の際に有効化していた可能性もあるし、Google側の案内で気づかないうちにオンになっていた可能性もある。ここは僕らの確認不足もあったと思う。
任せる範囲を、紙一枚に書き出した
そこから、担当者と一緒にいくつかのことを整理し直した。
- 今の広告文が、実際にどんな内容で表示されているかをスクリーンショットで残す
- 問い合わせフォームの遷移前後で、表示先のページが想定通りかを確認する
- クリック率や問い合わせ数の推移を、切り替わり前後で比較できるように記録しておく
- 自動化に任せる部分と、こちらで固定しておきたい部分(会社名の表記や、資格・許可番号に関わる文言など)を切り分ける
派手なことは何もしていない。ただ、「何が自動で動いていて、何を人間側が握っているのか」を、あらためて紙一枚に書き出しただけだ。
この話をしながら、僕はふと、以前クライアントから言われた別の一言を思い出した。「効率化してもらうのはありがたいけど、“任せる”のと“知らないうちに決められる”のは、全然違いますよね」。あのときは軽く聞き流してしまったけれど、今回のことでその意味を、あらためて噛み締めることになった。
仕組みが引き受ける範囲は、これからも広がる
同じ時期に、広告の世界ではもうひとつ気になる発表があった。大手ECモールの広告サービスが、動画広告の新しいフォーマットを複数発表したというニュースだ。視聴を一時停止した瞬間に商品情報が表示されるものや、位置情報をもとに近くの店舗へ誘導するインタラクティブな動画広告など、提供はまだ先の予定のようだが、購買や来店につながる新しい選択肢が今後さらに増えていくことをうかがわせる内容だった。
広告の世界は、これからも「人がやっていたことを、システムがどんどん引き受けてくれる」方向に進んでいくのだと思う。
ただ、それは同時に、「何を任せて、何を任せないか」を決める人間側の役割が、これまで以上に大事になるということでもある気がしている。技術が便利になればなるほど、その裏側で「うちの会社らしさ」や「顧客との約束事」を守る部分は、誰かが意識して残しておかなければ、静かに流されてしまう。
月に一度、自動の挙動だけを見返す
結局、その注文住宅会社の担当者とは、月に一度、自動化された部分の挙動だけを一緒に見返す時間を作ることにした。地味なミーティングがひとつ増えただけだ。でも、「勝手に変わっていた」という不安と、「変わったことを一緒に確認できている」という安心感の間には、思っている以上に大きな差があるのだと思う。
数字の面から見れば、その時間は何も生み出していないように見えるかもしれない。広告費の削減にも、問い合わせ数の増加にも、直接はつながらない。それでも、この一手間を惜しんだ会社と、惜しまなかった会社とでは、何かトラブルが起きたときの初動の速さや、クライアントとの信頼関係の積み重ね方が、じわじわと変わってくるのではないかと感じている。
「何を手元に残すか」を選ぶ仕事へ
広告の運用も、システムの開発も、便利な仕組みが増えるたびに、僕らの仕事は「代わりにやってもらうこと」を選ぶ仕事から、「何を代わりにやってもらい、何を自分たちの手元に残すか」を選ぶ仕事に変わってきている。
数字がAIによって最適化されていく時代だからこそ、その裏側にいる人の顔を見失わないようにしたい。あの担当者の一言は、あらためてそのことを僕に教えてくれた気がする。



